そんななすびだが今、映画界でも注目を集めている。’90年代後半に絶大な人気を誇ったバラエティ番組『進ぬ!電波少年』(日本テレビ系)の企画「電波少年的懸賞生活」で時の人となったなすびを題材にしたイギリス製作のドキュメンタリー映画『ザ・コンテスタント(原題)/ The Contestant』が9月上旬、第48回トロント国際映画祭でワールドプレミア上映されたのだ。
映画の内容はこうだ――。
「人は懸賞だけで生活していけるか」をテーマに大量のハガキとカンパンを渡され、目標金額100万円を目指し、裸での生活がスタート。アパートの1室で誰とも話すことができない孤独のなか、黙々とハガキを書き続けた。当選した際に披露する“当選の舞”などもウケて、放送当時は高視聴率をマーク。なすびも一躍人気者となった。
一方で、終わりの見えない監禁懸賞生活にメンタルも次第に蝕まれ、自殺を考えるほど追い込まれていった。情報も遮断され、そもそも肝心のなすびでさえ懸賞生活の模様が放送されていることを知らなかったという。そんな監禁懸賞生活は15ヵ月にも及んだ――。
映画を観た海外の観客たちは、その壮絶な生活に驚き、ショックを受けたという。
「電波少年的懸賞生活は’98年の企画で、25年の時を経て再び脚光を浴びましたが、同時に日本のテレビ界の闇も掘り起こされる可能性がありそうです。SNS上では『あの番組は深刻な人権侵害だったということ』『さすがにこの時代でもアウトだろ』といったコメントが寄せられています。
海外に限らず、日本の若い人たちが観てもショックを受ける内容ですから、過去に遡って問題視される可能性は十分にあるということです」(海外のドキュメンタリー番組に詳しいテレビ制作者)
当時、「電波少年的懸賞生活」を手掛けたのは、自身も番組に出演していたT部長こと土屋敏男氏だ。MCの松本明子と松村邦洋によるアポなしロケシリーズ、有吉弘行が世に出るきっかけとなった「猿岩石」時代の「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」なども手掛け『進め!電波少年』(日本テレビ系)時代から多くのスターを輩出してきた。
「当時の日テレは視聴率で他局の後塵を拝しており『電波少年』は前番組(『ウッチャン・ナンチャン with SHA.LA.LA』)のつなぎ番組でまったく期待されていませんでした。土屋さんが『だったら好き勝手やろう』ということでやったらハネたんです。その後は視聴者に飽きられないために過激にならざるを得なかったそうです」(テレビ局関係者)
しかし、なすびは番組出演終了直後から、土屋氏への不信感から距離を取っていたという。気になるのは現在の2人の関係だ。
「土屋さんは、なすびがメンタルを病んだことを知り、自責の念に苛まれたようです。『なかなか会ってくれないけど、なすびが(なすびの地元の)福島のイベントなら出てくれる』と言って、福島関連のイベントを主催し、共演しているようです。映画の中でインタビュー出演していますが、土屋氏は、『この映画についてはしゃべりたくない』と語っています」(芸能プロ関係者)
今、日本の芸能界はジャニー喜多川氏の性加害問題で世界から厳しい目を向けられている。
「20年以上前の番組ではありますが、この映画の反響は大きい。ジャニーズ問題と結び付けられ、人権問題として取り上げられる可能性は十分ありえます」(前出のテレビ局関係者)
ジャニーズ問題で芸能界が揺れるなかでの映画の上映はあまりにもタイミングが悪かったようだ。