福井のローカル線「福井鉄道」の終点が「たけふ新」駅です。「新」が後ろに付くなどどこか珍妙ですが、なぜこんな駅名になったのでしょうか。
「よこはま新」「おおさか新」のような感じ
北陸新幹線がいよいよ2024年3月に福井県内まで延伸し、敦賀発着となります。
注目を浴びる福井県ですが、ローカル私鉄のひとつに「福井鉄道」があります。福井市と、南隣の鯖江市や武生(越前市)をむすぶ街角の小さな路線です。一部では路面電車にもなっています。
その福井鉄道の武生側の起点駅は「たけふ新」駅です。「たけふ」という新駅なのではなく、「たけふ新」が正式名称。どこかヘンテコな駅名、なぜ生まれたのでしょうか。
この駅名が生まれたのは2023年2月。もともとは「越前武生」という駅名でしたが、市内にある北陸新幹線の新駅が「越前たけふ」となり、重複を避けるために変更が決定。「たけふ新」という新駅名の発表当時、SNS上でも「なんだそりゃ?」と困惑する声も上がっていました。
しかし実は、これは由緒ある駅名と言えます。というのも、2010(平成22)年までの駅名も「武生新」駅だったからです。1924(大正13)年の開業以来、駅名は武生新→越前武生→たけふ新と変遷しています。
今回の駅名変更は投票で決まりました。「福鉄たけふ」「福鉄えちぜん」「武生新」「菊花たけふ」「越前府中」から選ばれ、「武生というのは地元以外には難読だから」という理由で、ひらがな標記となったのです。これは新幹線の駅も同じ理由です。
では、なぜ「新たけふ」ではなく「たけふ新」なのでしょうか。「新大阪」「新横浜」など、頭に「新」を付ける例はありますが、うしろに付ける例はほとんど聞きません。
実は、1924年に「武生新」駅が開業したとき、すでに「新武生」駅があったのです。国鉄武生駅の東側から北東へ伸びるローカル私鉄「武岡軽便鉄道」の発着駅でした。しかたなく順番を入れ替えて「武生新」としたわけです。
同じように福井市中心街の玄関口の駅も、「福井新」駅と命名されました(現在は赤十字前駅)。どこか珍妙な駅名も次第に定着し、惜しまれつつ消えたあとも最多投票で「たけふ新」として復活を遂げたのです。